毎週から毎日へ。地産地消をもっと日常に

三宮・東遊園地でほぼ毎週土曜に開催しているEAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETは、 この春4年目を迎えます。参加してくださる皆さまのおかげで、街の朝市として何とか継続しています。そこは毎週お見かけするご近所さん、農家さんと会話したい人たち、美味しいものが大好きな人たち、農や食に興味のある学生さんや、遊びにやってくる子どもたち、若い人とのおしゃべりが楽しみなお年寄り、そして最近では朝ごはんを楽しみながら仕入れをされる飲食店の料理人さんなど、 老若男女が「農」を囲み集うコミュニケーションの場として育ちつつあります。しかし、土曜の朝3時 間ほどの開催だけでは、まだまだ街なかで地産地消を日常に取り入れるのが難しいのが実情です。 一方、生産者側から考えてみると、マーケットが始まったことで、生産者の立場を理解してくれる客層への直接販売の機会が生まれ、街なかに農家のインフラが構築されたことは大きな成果と言えます。しかし、これもまだ十分とは言えません。地産の野菜を求めてくれている人たちに届けたい春夏秋冬の恵みは、まだまだあります。そして朝市では難しかった、海からや牧場からのローカルフードもあります。こういった実情を補い、より地産地消を日常に取り入れていくため、EAT LOCAL KOBE の拠点施設「FARMSTAND」が生まれることになりました。

「生産者も消費者も豊かにする“新しい流通”の実験」

EAT LOCAL KOBE FARM SHOPの目的は、他にもあります。1つは「流通」です。全国的に、 農産物の流通は卸売市場等を通じた大規模流通が主流です。そんな中、マーケットでは「農家と 消費者の顔の見える関係」を築く新たな取り組みとして、農家はレストランや消費者へ1軒1軒直 接配達したり、郵送したり、近くの直売所での委託販売などに取り組んできました。しかし、農家にとって配達や郵送は手間もコストもかかる作業ですし、簡単には流通の仕組みとして広がりません。ある時、「消費者と農家の関係の真ん中に、この流通の手間をシェアする中間的な場があれば、農家の負担が大きく減るのではないか」という声がありました。私たち消費者が少し農家に歩み寄り、 都心の中間的な場へ足を運ぶことによって、農家の負担が減る。それは、より良い野菜を栽培することに協力するということで、結局のところ私たちの食も豊かにすることができるのです。この「北 野」という、三宮駅からの距離が「東遊園地」とは変わらない場所で、そのステーション的な役割を担う実験を行いたいと思っています。そのためには農家が連携し、独自の新しい配送ルートを作るということも求められますが、数年前とは違いしっかりとした繋がりが生まれている今なら、不可能 ではないという農家の意見もあります。

「生産者の活動の多様化に取り組む」

目的のもう1つは、農家が都心でも柔軟に働ける場や、加工販売スペース、食事会や教室などのイベントを開催する場などを作り、「農家の活動の多様化」に取り組むことです。(収入源の多様化でもあります。)それは現役農家のためだけでなく、これからの若者が農業に興味を持ち、農業という職業を「自分ごと」としてリアルに結びついていくために必要なことだと考えるからです。若者 が新規就農してもやっていけるためのモデルを探したい。「農家を目指す若者」を増やし、サポートするということを、現役の農家や若者と共に、お客さまや様々な立場のひとと共に、ぜひチャレンジしてみたいのです。それにはまず、若者にとって身近な都心で「農が存在感を持つ」ことが、始まりの第一歩になると考えます。そして「農家になっても、いろんな生き方がある」「新規就農でもやっていける方法がある」ということを伝え、サポートする必要があります。私たち大人が次世代の生き方・働き方を理解しサポートすることが、近い未来へのステップだと思います。

「コミュニティー協力型ファームショップ&イートイン・スペース」

このような背景や、様々なご縁が重なり、北野坂の中心に位置する路面スペースで、ファーマーズマーケットを運営する一般社団法人 KOBE FARMERS MARKETが運営の主体になり(※)、会員 である農家やレストラン、物販といった食の事業者を中心に取りまとめ運営する「コミュニティー協 力型ファームショップ」の運営を開始することとなりました。※ 経営は有限会社Lusieとなります。 このショップには、神戸市内の若手農家の野菜を中心に、海や牧場からの恵み、取り組みに共感してくれる食の事業者の商品などを中心に、オリジナルグッズなども並びます。また、食材の廃棄を減らすため、可能な限りの野菜を調理し、その場で食べてもらえるイートイン・スペースも設けます。 イートイン・スペースでは、お米を主食とした定食スタイルで、基本的にあまり手をかけない家庭料理のようなものを提供する「地域の食堂」を目指します。(北野という場所は古くからの住宅地でもあります)さらに、EAT LOCAL KOBE 関連のイベントや、農家や食の事業者による料理教室 やワークショップもこちらで開催していく予定です。農家だけでなく、農とは切っても切り離せない食の事業者を目指す若い人たちとも、連携していきたいと考えています。

「農を支える」とか「農を 変える」とか、そんな大きなことは私たちにはできません。だけど、農漁業を営むひとたちに寄り添 い伴走しながら、同じ目的地を目指すことなら出来るかもしれません。そこは、私たちの日々の淡々とした暮らしの中にある「小さな選択」の積み重ねの先にあります。そこが何処なのか、どんな道があるのか、一緒に探してみませんか?そして、いつか私たちの取り組みが神戸という地に根を張ったとき、私たちにとっての「ローカル」というエリアがもっと拡がればいいなと思います。私たちの想う地産地消は「特別なご馳走」ではなく、「伴走していきたい生産者さんがいる暮らし」また「食に 願いを込める暮らし」ということです。自然と共にある農水産物の色・形や味だけではない向こう側を取り戻す活動と考えます。それを楽しく、無理せず、少しずつ。この神戸でも!

● EAT LOCAL KOBE FARMSTAND●

住所:神戸市中央区山本通1-7-15 KITANOMAD 1階

※このショップは KITANOMADという施設の一部になります。