ファームでの収穫。バーバラさんの肉料理を囲む小さなパーティー(前編)

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まだ時折雪が散らつく、2月初旬のとある週末の朝。バーバラさんと待ち合わせて三宮を出発。車でドライブしながらパーティー用の食材探しに出かけます。目指すは西区にある農場と直売所です。

バーバラさんの故郷ドイツでは、週末に家族親戚が集まって小さなパーティーをすることが日常だったそう。冬の週末の食事会のメインディッシュは肉料理が多かったので、今回は『ザワーブラーテン』という煮込み料理を教えてもらうことになりました。そのほかのメニューは農場や直売所で食材を見ながら決めましょうということに。どんな冬の食材に出合えるのか二人ともワクワクしながら出発です!

まず最初に、神戸市西区岩岡町で代々農業を営む大西雅彦さんの畑を訪ねます。

神戸市の中でも西区は豊かな自然に恵まれた丘陵地帯で、雄大な田園風景 が広がっています。普段の生活ではなかなかこの辺りに来る機会がないので楽しみです。大西さんの農園『CAL-FARM』に到着して車を降りると、三宮よりぐっと体感 温度が低い。吐く息は白く、バーバラさんと思わず顔を見合わせて「寒いね」 「車でたった30分の距離でもこんなに気温が違うのね」と口々に。迎えてくれた大西さんに案内されてビニールハウスの中へ。

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「この中は温かいですね。青い匂いがする」。「こんなにたくさんのトマトが 西区で育てられているなんて全然知らなかった」。

およそ1000坪という広さのビニールハウスの中に、何と1万株ものトマトが! 「大小様々、17種類もの品種が、栽培されています。」ハウスの中には朝の優 しい光が降り注いでいます。「トマトの栽培には太陽の光が一番大事なんです」と大西さん。「しっかり光合成をさせることで、アミノ酸が豊富で美味し いトマトになるんです」。「お肌にもいいんですよね。食べてみてもいいです か?」とバーバラさん。トマトのもぎ方を大西さんから教わって、二人であれこれ食べ比べ。

ころんとした丸い形が愛らしいプチトマトは「シシリアンルージュ」。もともと地中海原産の品種で、シチリア島の美しい女神・ヴィーナスの口紅をイメージして、名付けられたんだそう。「生でも、火を通してもいけますよ。オリーブオイルと相性がいいし、焼くと甘くて濃厚な旨みになりますよ」と大西さん。

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緑とオレンジの虎柄、ちょっと珍しい色をしたプチトマトは「ブラッディタイガー」という品種だそうです。見た目からは想像ができないほど、糖度が高くて、リコピン含有量は普通サイズのトマトの6倍もあるんだとか。「うわ、甘い! 青いけど熟れているね」とバーバラさん。小さいのに実がしっかりと厚くて美味しかった。こんなに元気なトマトが西区で育っているなんて!もぎたてをかじって二人とも感動です。

「今の時期は根菜があるので、大根や蕪の上に、色々なプチトマトをスライスして載せて、チーズとオリーブオイルかけて焼くとピザみたいになって美味しいんですよ」と大西さんがオススメのレシピを伝授してくれます。「いいですね、それ!農家さんならではのアイディアで。バーバラさん、さっそくパーティーで出してみましょうよ」。「うん、美味しそうですね」とバーバラさんもにっこり。「じゃあさっそく畑に根菜、採りに行きましょうか」。

ビニールハウスを後にして、すぐ近くにある大西さんの畑へ。「この辺りは朝、霜が降りるんですよ」と大西さん。その寒暖の差が野菜の味 を濃く強くするのだとか。ちょうど寒い日で、畑の畝間にはまだ薄氷が張っています。だけど朝露を纏った野菜に、光が注ぐとキラキラと幻想的に輝いています。

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赤大根に緑大根、オレンジや黄色のニンジン、ちりめんキャベツなど、魅力的な野菜が植わっています。粘土質でぬかるんだ土に足を取られそうになりながら、二人でニンジンを収穫しました。立派なニンジンを手にして、これでサラダを作ろうと思いました。新鮮なニンジンの葉も普段はなかなか手に入らないし、栄養も満点なので、何か料理のアクセントに使えたらなとも。「大根や蕪はきっとシンプルに蒸すだけで十分美味しくなると思いますよ。カラフルでカワイイので、テーブルもきっと華やぎますね」とバーバラさん。

ふと見ると、畑の周りには収穫の際に切り捨てた野菜の葉がたくさん落ちてい ます。「これ捨てちゃう物ですか?もらってもいいですか?」と大西さんに訊ねました。うちではいつも野菜の葉や皮などのくず野菜を昆布と一緒に煮出してベースとなるだしを取っています。美味しそうな根菜がたくさん手に入ったことだし、このだしと合わせて、冬野菜のスープを作ろうと思いました。身体が温まるのでこの季節、特にオススメです。

大西さんとお別れして、続いて車は同じ西区の押部谷町の大型の直売所『六甲のめぐみ』へ。ここは近隣の農家の採れたて野菜をはじめ、切り花・苗・果 物・加工品などが集まる大型の市場。いつもお客さんでいっぱいです。この日は、大きな白菜やキャベツ、青々としたほうれん草に、立派な根菜類などが並んでいました。有機野菜のコーナーもあって、一般的なスーパーや百貨店で売られている有機野菜に比べると、ぐんと割安、何だか得した気分。

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バーバラさんとサラダに使う野菜を選んでいると「ただいまイチゴ、陳列中です」という店内アナウンスが。

売り場ではまさに今、農家の方が運んできたばかりの西区産のイチゴのパックを並べていて、ちょっとした人だかりが。並べるそばからお客さんが次々と手にとっていきます。これぞ直売所の醍醐味です。そんな様子を見ていたバーバラさん「粒が大きいイチゴですね。そうだ、これもパーティーで出しましょうよ。『神戸ワイン』と合わせて、フルーツパンチ・ボーレンを作ったらどうかしら?お口直しにぴったりよ」と。「いいですね!」あまりに美味しそうなイチゴを見て、メニューがひとつ増え ました。

「あとは何が要りますか?」。 「ドイツのメインディッシュの付け合わせにはジャガイモが欠かせませんね」、二人で広い店内を、カートを押して、お芋のコーナーへ。

品種の異なるジ ャガイモがいくつも並んでいます。「どんな味のがいいのかしら?たくさん使う?」とバーバラさんと相談しながら選びます。「スープに使うセロリと、サラダ用にカラシナやベビーリーフもあった方がいいね」など話し合いながら、売り場を回るうちに食材はずいぶん揃ってきました。「パーティーのテーブルを飾るお花もここで買っていきましょうよ」。 直売所を回って見て、改めて神戸の農産物の豊かさを実感。店で使いたい食材もたくさんありました。

『六甲のめぐみ』を後にして、いよいよメインディッシュ用のお肉を買いに、 西区の櫨谷町に新しくオープンした『マルシェ六甲』へ移動します。

流れる車窓の風景は、三宮や元町の賑やかさからは考えられないほど、静かで 牧歌的な雰囲気です。「ほんの少しのドライブなのに、自然がいっぱいでなんだか旅しているみたいにリフレッシュできますね」。「私が生まれ育ったドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州でも大きな街と街の間にはこんな風に丘陵地があってね、畑がたくさんありましたよ。ジャガイモやニンジンなど日々の野菜が栽培されています」。西区を走って故郷の景色を思い出したようです。私も穏やかな気持ちで、休日のドライブを満喫している間に「マルシェ六甲」の到着しました。

『マルシェ六甲』では、櫨谷地区の『神戸牛牧場』産の牛肉を。『ザワーブラーテン』用にブロックで購入します。

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店内には目線の高さに設えられた、見やすくて大きな広いショーケースが。 「さすが牧場直営だけあって、新鮮で安いね」「日本のお肉は美味しいけれど脂が多いです。この料理にはなるべく脂が少ない赤身肉の方がいいと思います」とバーバラさん。

お店の人に伝えて、1kgの牛肩ロース肉を買います。店内には他にも西区産の豚肉や、調味料、メンチカツやコロッケなどの総菜もあります。パーティーの食材をすべて買い終え、何だか小腹が空いてきたので、揚げたてのメンチカツを買って二人でほお張りました。「半日で、いっぱい買ったね。西区は食材の宝庫ね」とバーバラさん。冬ならではの食材を使った楽しい食卓になりそうです。

さあ、パーティーの準備を始めましょう。 (後半に続く)

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