世界の都市農家インタビュー②;野菜・ハーブ・果実が取り放題。英国市民が育てる街中農園。

街に待った URBAN FARMING

小さな市民運動から始まり、今や世界的な注目を集めている URBAN FARMING(アーバンファーミング)。簡単にいえば、街で野菜や植物を育てることです。自然が少ない都市における、子供達の食育の「教室」や、食糧を供給する「農場」、町の人々が交流する「公園」のような役割を果たしています。人口が減少傾向にある日本においては、空き地の「有効活用」や「防災」、「防犯」にもつながると期待がされているのです。

そこで、今、世界でどんなことが起きているのか。神戸で URBAN FARMING(アーバンファーミング)は広がっていくべきなのか?そうであれば、私たちは何を学べるのか。そんなことを考えるために、私たちは世界の先端をゆく3つのアーバンファームにインタビューをしてみました。

世界のアーバンファーム インタビュー企画

第1回; RON FINELY(アメリカ);車道と歩道の間の空き地を畑にしたギャングスタ。一度逮捕されそうになりながらも、逆にそれを合法化。

第2回; INCREDIBLE EDIBLE TODMORDEN (イギリス);町中に野菜や果物、ハーブを栽培。誰でも無料で自由にとっていい仕組みに。

第3回; AGRIPOLIS (フランス);世界最大の屋上菜園を運営。世界の人口の50%以上が密集する都市への食糧供給と環境問題にアプローチ。

彼らが何を目指しているのかや、実際の運営方法など、神戸で今から始める人にも役立つ情報や「やってみよう!」と気持ちを突き上げてくれる言葉がたくさんありました。

 

第2回; Incredible Edible Todmorden(英)

町中に野菜や果物、ハーブを栽培。誰でも無料で自由にとっていい仕組みに。

 

“don’t ask for permission, ask for forgiveness”
(許可ではなく、許しを得なさい!)

つまり、先に(誰かの土地に)勝手に植えて、綺麗な畑やガーデンをつくり、そこから「ごめんなさい」と許しを得て活動を続けるというのです。多くの地主は、雑草が生い茂った土地がいつの間にか綺麗になり、野菜やフルーツ、ハーブが取れ、街のたくさんの人が喜んでいる姿を見ると、「元に戻して」とは言わないそうです。

そもそも、Incredible Edible Todmorden (インクレディブル エディブル トッドモーデン) の活動は、2008年のリーマンショックで人々が暗い気持ちになり、子供立ちの将来を心配していた中、「何かをしないと!」と立ち上がったところからスタートします。街中の人の共通点でもあり、みんなが生きていくために欠かせない「食」を作ろうとしたのです。

そこで街中の空いているスペースを耕し、種をまき、水やりをし始めたのでした。活動が進むにつれ、人々が集まり、畑仕事のあとには必ず、一緒に食卓を囲みみんなでワイワイ話す時間を作り、その時間がより街の人々の交流と助け合おうという気持ちを増幅させていったそうです。

食卓を囲むと、年齢も、人種も、国籍も、宗教も、仕事も関係なく誰もが楽しく会話をしてそれこそがこの活動の原動力になっていったといいます。野菜だけなくコミュニティも育む、そんな活動です。

「全員がボランティア」で「畑仕事は2回/月

インタビューを続けるとわかってきたことは、中心メンバーを含めて全員がボランティアであることです。また行政からの補助金も「資料作りが楽しくないし、自由にできないから、使わないことにしたの」というのです。そのため活動資金は寄附金と、講演料で必要な資材を賄っているといいます。たまには、警察が違法な大麻栽培業者から押収した機材や土を提供してくれることもあるみたいですが。

それでも人が集まるのは、それぞれの人が持っているスキルを活かすことに気を使い、無理なく楽しんで参加できるようにしているためだそうです。自分も楽しく、自分が住む街を美しくでき、野菜やハーブ、果物をいずれ収穫できるのが良いみたいです。

「月に2回」という畑仕事を行うスパンも印象的でした。コミュニティメンバーで、アーバンファーミングを行う上ではとても現実味のある設定です。1ヶ月に1回だと畑が荒れますし、毎週だと参加が難しい方もでてくるためです。

住民の信頼関係、街の景観、そして住み心地の良さ

しかし何よりすごいことは、活動の根幹にある寛容な心です。活動に参加するための資格や条件もなく、また誰が野菜を採ってもいい。たとえそれが隣町の人でも、外国の人でも。”It’s for everybody” という言葉にその心がつまっているように感じました。

誰かの利益に寄らず、街全体、コミュニティ全体で利益を得ようとする活動だからこそ街の人に支えられ、人々が場所を提供し、多くの人が応援し参加する活動になっていました。もちろん、ここまで街の人々からの信頼を得るまでの道のりは簡単ではなく、新聞に反対意見が掲載されるなどもあったそうです(詳しくはインタビュー動画にて)。

街の条例が変わるほど人々に普及

しかし今や、議会が条例を変え、新築の自宅を建てるとき、庭をつけることが義務化され、Incredible Edible Todmorden がその庭をみんなの庭にしているそうです。街の中で畑をすることで、食が人々の信頼関係を醸成し、街の風景や住み心地の良さをも変えていく。ゲリラ的に始めた小さな活動が、今や街のルールを変え、人々の生活に組み込まれている。アーバンファーミングの可能性は、より住みやすい市民社会をつくるヒントになるのかもしれない。そう思わせてくれるインタビューでした。

動画ではIncredible Edible Todmorden (インクレディブル エディブル トッドモーデン)の創設者ジュディーさんのプレゼンテーションや、フルインタビューをご覧になれます。今すぐ役立つコツから、考え方、仲間の巻き込み方まで示唆に富んでいますので、ぜひご覧ください。