「じゃあ、また東遊園地でね」│綾香さん(中央区)

※ 「VOICE」では、EAT LOCAL KOBEの取り組みに参加してくださる人たちの声をお届けしていきます。今回はマーケットや暮らしの学校、CSAにも参加してくださっている中央区在住の綾香さんです。

 

神戸のファーマーズマーケット「EAT LOCAL KOBE」。

巡りゆく季節や訪れる人々と共に在り、どんどん楽しく、そして面白くなるローカルなマーケッ ト。その存在は私の生活の一部となり、日々の会話のなかに何度も登場するようになった。

我が家では、親しみを込めて「あおぞらマーケット」と呼んでいる。「EAT LOCAL KOBE」の言葉は子供たちには少し難しく、「ファーマーズマーケット」も長くて発音しにくそうだったから。家族の間でのみ通じる暗号のような、大切な呼び名。

屋外のマーケットだから実際は、雨の降る日も雪の舞う日もある。雲の多い金曜日の夜は「明日、大丈夫かなぁ」「レインコートが必要かなぁ」と、空を見上げながら話している。その分、土曜日の朝の光がひときわ嬉しく感じるようになった。

マーケットでは、生産者さんたちと会話しながら、自分たちの口に入るものを直接購入する。 子供たちにコインを渡して「自分の好きなもの」を選ばせることもある。 じっくりと欲しいものを吟味したり、言葉のやりとりを愉しんだり。 親として、この街に暮らす「生活者」として「ほんとうに大切なこと」を、しっかりと次の世代につないで行けるように。

ファームの訪問も好きで、時間を見つけては家族で出掛ける。 マーケットで親しくなった生産者さんを訪ね、実際に作物が育つ過程を見学する。収穫のお手伝 いをさせていただくこともある。 土や作物に直に触れ、香りや手触りを味わいながら「自然な」カタチを知る体験。 いのちが生まれるファームには、生きている喜びを実感できる豊かな時間が流れている。

秋に果樹園へ伺った時のこと。「ジュースを売っていた人だ」 と作業する生産者さんを見て、子供たちが目を丸くしてつぶやいた。

今は分業が進んでいるから、自分たちが食べているものが誰の手によって、どんな風につくられ、 どのようなルートで手元まで来ているのかよく分からないことが多い。

つくった人が、売っている。売っている人が、つくっている。という仕組みはとてもシンプルで、ダイレクトに心に届くのだと思う。

神戸のファーマーズマーケットでは「おはようございます!」「またね!」と元気な挨拶があちこ ちで交わされている。風に乗り聞こえてくる会話からも、繰り返し足を運ぶ人が多いのが分かる。 たくさんの人たちに受け入れられ、また必要とされているのは、きっと携わる人たちが皆真摯で 明るく、とても前向きだから。 木々たちの下で、緑ある場所で、また行きたいと思わせてくれる何かがそこにあるからだと思う。

時々、友人たちも誘ってみる。すごく楽しいから、一緒に行かない?と。

「土曜日の、朝か~…」忙しい彼らは、最初は少し躊躇しながらも「面白そうなことやってるよね」「知り合いが出店しているから行ってみようかな」「前から、行きたいと思ってた!」色々な会話に発展して、いつの間にか「じゃあ、また東遊園地でね」と、合言葉のようなものが生まれる。

年が明け、ウィンターシーズンが始まった。 真冬のマーケットはどんな感じだろう。 マフラーと手袋、あたたかいブーツ、ニットの帽子を身に着けて出掛ける。 ひんやりと冷たい空気のなかに、いつもの顔ぶれを見つけてほっとする。 今朝も挨拶しながらされながら、のんびりゆっくり見てまわる。

定期的に、家の近くまで野菜を届けていただいているBio creator’sさんのところを覗く。

「寒いですね~」と声を掛けると「うん、でも大丈夫!畑より寒くない!」元気いっぱいの笑顔が返ってくる。 信頼のおける生産者さんたちがつくったものをいただく安心感は、何ものにも替えがたい。

Bio creator’sのCSA*に参加した当初は、どんな感じの生活になるのか上手くイメージできなかっ た。 けれど今は、自分たちが大切にする暮らし方や生き方を応援してもらっているようでとても心強 い。 「互いに」サポートし合っている感覚が心地よく、これからも無理のないカタチで続けて行くこ とができればと思っている。

*CSAについてはこちら (いまも継続して参加を募集しています)

そうだ、春を感じるお花と、子供の好きなクッキーも欲しい。

「ホットみかん」の白いポット。あったかいみかんのジュース、飲んでみたいな。

やわらかそうなプチヴェール。フリルスカートそっくりの、小さな可愛い姿。

ポップコーン?もとはこんなカタチなんだ。バターと塩を用意して、家のお鍋でつくってみよう。

「わたし流」マーケットの味わい方は、それぞれの季節にいっぱい見つかる。 北風で時折が身が縮こまっても、冬には冬のお愉しみ。 お気に入りのブランケットをベンチに敷いて、マシュマロが溶けるのを待つ時間。 往き来する笑顔を眺めながら、カラダと心をほっこりあたためる。

「それ、かっこいいですよね!」

立ちのぼる湯気の向こうから、コーヒー屋さんに声を掛けられる。 蓋つきで保温の効く、オレンジ色のマイボトル。 スープなどの汁物が「朝ごはん」のメニューにある時はいつも、持参したお椀替わりのマイボトル に入れてもらう。

「けっこう、便利ですよ」嬉しくなって私も答える。

未来は自分たちの手でつくりたい。ほんの少しでも意識して行動に移すことが、持続可能な社会につながると信じているから。

来週は何を探しに行こう?たくさんの、楽しい会話と美味しいもの。木漏れ日が差し込むこの場所で、最高に魅力的な人たちと、笑顔と思いをシェアし合おう。

ワクワクがいっぱい詰まった、土曜日の神戸の朝に。

(原文尊重)