FARM to FORK 2022 レポート ①

10月29日(土)・30日(日)に開催した、第8回食都神戸DAY「FARM to FORK 2022」。須磨海岸で行なった年に一度のお祭りは、神戸の海、山、田畑とまちの人々をつなぐための様々なトークイベントやライブ、そして美味しいローカルな食が交わる楽しい2日間となりました。そんなイベントの様子を振り返ります。

今年のシンボルは、農作・豊漁を願って製作したお神輿

みんなで願う豊作と豊漁

2015年から開催している食都神戸DAY「FARM to FORK」は、地産地消を通じて海・山・田畑と都市の“心の距離”を近づけるためのお祭りです。

今年のテーマは「みんなで願う豊作と豊漁」。農家さん、漁師さん、そしてまちで暮らす私たちが近い神戸だからこそ、一緒にお互いの幸せを願い合いたい。そしてお互いに応援し合おうという思いを込めて開催しました。

海岸沿いに一直線で並ぶファーマーズマーケット

海岸沿いにはずらりとマーケットが並びました。神戸市内を中心に近隣地域の海、山、田畑、そしてまちから漁師さんや農家さん、そしてローカルなモノ・食材を使った様々な事業者さんが集結。これは都市と生産地の距離が近い神戸だからこそできることです。毎週土曜日のファーマーズマーケットにお越しいただいている常連さんだけでなく、より多くの方に、生産者と直接会ってお話しできる機会をお楽しみいただけたのではないでしょうか。

農家さんから野菜のことを聞きながら買うことができるファーマーズマーケット
北区や西区から旬の野菜が届きました
ローカルな食材を使ったごはんのいい匂いがどこからともなく広がっていました
様々なものづくりワークショップのブースも

食べ物だけでなく、装飾もエネルギーも地産地消

砂浜に馴染んだ茅のステージは、今年も茅葺き職人チーム「くさかんむり」によるもの。神戸の農家さんから借りてきた米藁やススキを使って、波のようにも感じられる風景をつくっていただきました。イベントが終了したら、米藁はまた農家さんの元へ戻り脱穀されてお米になる予定。さらにその後はくさかんむりが買取り活用することで、なにひとつゴミにならず循環します。

また、ステージの音響設備をはじめとした電力は「ロケットバッテリー」によるソーラー発電で供給。その場で発電しながら使用することで、エネルギーも地産地消していこうという取り組みです。

これまでEAT LOCAL KOBEでは食べ物の地産地消を進める活動をしてきましたが、それ以外のモノやコトもできる限りローカルな人と資源によってつくりあげることを目指してFARM to FORKを開催しています。

茅葺職人チーム「くさかんむり」による茅のステージ
屋根に載せたソーラーパネルで発電しながら寝泊まりもできるモバイルカー

ここからは、そんなステージで行われたトークセッションの様子をご紹介します。

トーク「URBAN FARMINGサミット」

まちなかで土を耕し野菜や植物を育てるURBAN FARMING。近年、神戸の各地で続々とURBAN FARMINGの新芽が出てきています。今回は、北野エディブルヤード(中央区)や塩屋9丁目(垂水区)、ウンガノハタケ(兵庫区)、おさんぽ畑(長田区)を運営されているみなさんに、それぞれの活動に至る背景や課題などの活動報告をしていただきました。

左から、聞き手・衞藤玄海(KOBE FARMERS MARKET)、服部真貴さん(ウンガノハタケ)、角野史和さん(おさんぽ畑)、宮本健司さん(北野エディブルヤード、塩屋9丁目他)

「海の環境を良くするためには、海だけでなく山や田畑の環境を守らなければならない」という漁師さんの思いをきっかけに、運河のそばでお米づくりをはじめた「ウンガノハタケ」。近隣で問題になっていたゴミ屋敷跡を貸農園として運営している「おさんぽ畑」。利用者が少ない緑地空間の有効活用を目的に、ハーブや果樹を育てるクラブ「北野エディブルヤード」。災害後に長年放置され、建築するにも難しい条件の土地にぶどう畑をつくろうという「塩屋9丁目プロジェクト」。

実例を聞くことで、自然環境や食育、都市計画など様々な課題の解決方法としてアーバンファーミングの可能性を感じることができました。また、まちなかで耕す人々や実りのある風景としての魅力についても語られ、アーバンファーミングが益々広がった神戸の未来を想像された方も多いのではないでしょうか。そんな希望をタネに、まずは身近で行われている活動を知り、参加してみることからはじめてみませんか。

URBAN FARMINGサミットの全容は、EAT LOCAL KOBEのYouTubeチャンネルよりご覧いただけます。
https://youtu.be/2qGvYjsRZIA

トーク「神戸におけるサーキュラーエコノミーを考える」

ヨーロッパを中心に広がるサーキュラーエコノミー(循環型経済)という概念。茅葺職人の相良育弥さん、廃屋建築家の西村周治さんとともに、私たちにもできる循環型社会への取り組みについてお話しました。

左から、聞き手・小泉寛明(KOBE FARMERS MARKET)、西村周治さん(西村組)、相良育弥さん(くさかんむり)

日本でも有数の茅葺き屋根が残る地域である神戸市北区を拠点に、茅葺文化を継承する職人チームを束ねる相良さん。空き家が密集した一帯を買取り、自分たちで直して村をつくる「廃屋建築家」の西村さん。既にあるもの、土に還すことができるものを活用した建築に携わるおふたりから、「家づくり」における循環の話を軸に、これからの社会についての考えをうかがいました。

現在の資本主義経済ではお金を稼ぐことが最優先。家づくりにおいても、海外から安価な工業製品を集めて組み立てるだけの新築住宅がどんどん建てられています。その影で、古くなったものは(まだ使えるものであっても)廃棄されていくという実態に警鐘を鳴らすように、西村さんは空き家やそこから出た家具、資材の再利用を積極的に行なっています。

西村組による「廃屋から出てきた家具展」

かつては身近にある木、土、草などの素材を使って、地元の人が集まってお互いの家づくりや茅葺き屋根の葺き替えを手伝い合うという慣習があった、と相良さんは言います。様々な環境問題や社会情勢が危ぶまれる今、まさにそのような循環型で互助的な仕組みを見直すべきなのかもしれません。

利益を追求して作られるものではなく、もっと本質的に必要なもの、豊かなものとは何なのか?住まいだけでなく、食べ物や身に纏うものを選択する際に「何に価値があるか」を考えることの大切さを学びました。

トーク「豊作豊漁祈願クイズ大会」

神戸の農林漁業に携わる方々と、神戸にまつわる「じつは」なクイズを出し合い競いました。

左から、若林良さん(須磨区・すまうら水産)、森本聖子さん(北区・農家)、聞き手・小泉亜由美(KOBE FARMERS MARKET)、山﨑正夫さん(灘区・SHARE WOODS)、尻池宏典さん(長田区・神戸ペアトローリングス)

漁師の若林さんと農家の森本さんチーム、木材コーディネーターの山﨑さんと漁師の尻池さんチームがそれぞれタッグを組んで「神戸市内にある農家さんの件数は?」「しらすの水揚げ量、兵庫県は全国何位?」「山の木を伐ってから建築材として使えるようになるまでどのくらい時間がかかる?」といったクイズに挑戦。またそのような問いを軸に、神戸の農業のこと、漁業のこと、山の環境、そして食都神戸の取り組みについての「じつは」なお話が展開されました。クイズ形式で楽しみながらも、神戸の知られざる側面を垣間見られたのではないでしょうか。

海も山も田畑もつながっていて、それらの距離が近い神戸はとても恵まれた環境であるということをまちで暮らす人にも知ってほしい。そして互いの領域を超えて協力していきたいというみなさんの思いにも触れました。例えば、漁師さんと林業者が一緒に山で植林をする、漁師さんからもらった海の産物を肥料にして農家さんが野菜を育てる。そんなコラボレーションが今後実現するかもしれません。そしてまちに暮らす私たちも他人事ではなく、まずは神戸の海、山、田畑に興味を持ち、「知ること」からはじめていきませんか。

クイズ大会の全容は、EAT LOCAL KOBEのYouTubeチャンネルよりご覧いただけます。
https://youtu.be/AgURCRA7Yww

レポート第二弾では、2日目のゲストトークや音楽ライブなどの様子をご紹介します。