2. FARMERS MARKETのはじまりからいま

2. FARMERS MARKETのはじまりからいま

2014年 「木の下で開催しなさい」「毎週続けて開催しなさい」

ファーマーズマーケットの社会実験を行う前に、アメリカ・オレゴン州ポートランド市を訪れ、ファーマーズマーケットを視察し、運営団体にヒアリングを行いました。ここで受けたアドバイスが私たちの方針の大きなポイントとなっています。

それは「木の下で開催しなさい」「毎週続けて開催しなさい」というもの。「空いているスペースや駐車場を使ってマーケットを開催すればよいというものではなく、人々が訪れたいような気持ちのよい空間で開催しなさい」「毎週開催しマーケットを日常化させることが重要で、続ければ続けるほどお客さんは来てくれる」という言葉が強く心に残りました。

 

2015年春 「東遊園地・活性のための社会実験」として

2015年にウェブサイトでの情報発信をスタート。それは神戸で育てられている季節の食材を紹介し、誰がつくっているのか、どこで買えるのかというシンプルな発信でした。(神戸の農漁業)その後、神戸産の食材を生産者から直接買える場を市内の中心部に作ることが必要だと感じ、ファーマーズマーケットの実験的開催につながります。

はじめてのファーマーズマーケットは、6月13〜14日(土・日) に中央区・東遊園地で2日間開催。たまたま同時進行で動いていた東遊園地の活性化のための社会実験に参加できることになり、ポートランドで教わったように気持ちのよい木々の下で開催できる運びとなりました。(2日間で18店舗ほど参加)

はじめての開催にどのような反応があるか不安もありましたが、少し告知しただけにも関わらずたくさんの人が集まりました。「農家さんと話してみたい!」「どんな風に野菜が育てられているのか聞きたい!」といった声が多く、消費者と直接会話してみたかった農家さんからも好評でした。(春のマーケットの様子はコチラ

2015年秋 「本当に毎週開催できるの?」

「毎週続けて開催しなさい」というポートランドで教わった言葉を信じ、2度目の社会実験を6週連続+1週で合計7回、秋に開催しました。事務局の設営・装飾などの手間を減らしたコンパクトな運営とし、新たな出店者さんもお誘いしてブースを増やし実施しました。テントやテーブルなどの什器は、公園内にある少し離れた建物の軒下に保管。毎週その移動にふらふらになりながらですが、ボランティアさんたちの協力もあって、なんとか終えることができました。(毎週、農家グループ5店舗(10数名の農家さん)、食物販6店舗、朝ごはん担当1店舗、コーヒー担当2店舗ずつが出店)

毎週開催することでお客様が分散してしまうのでは?という心配もありましたが、結果的には毎週お客さまが増えて、全7回が終わる頃には「これからどこで野菜を買ったらいいのか…続けてほしい!」とお客さま、「もっと消費者に直接届けたいから、続けてほしい!」と農家さんの声。

そんな声が聞こえたなら継続しないわけにはいかない!ということになり、社会実験を卒業し、毎週開催にむけて一般社団法人の立ち上げを含めた様々な準備をスタートしました。

2015年冬 「小さなマーケット」と「みんなでつくろう!」

春からの継続開催を目指して準備を進める傍で、コミュニティの醸成も兼ね、場所を元町駅近くのカフェ・マルメロに移し、毎週土曜日に「ちいさなマーケット」を開催しました。毎回4-5ブース(交代で農家2、食物販やコーヒー3店舗ほど)でしたが、助け合っての運営を重ねることで互いに理解や信頼が深まり、春に向けて土台を堅めることができました。

また春からの準備として、みんなでテーブルやベンチなどの什器も手作り。農家さん、お菓子屋さんや行政など「みんなでつくろう!」を合言葉に集まりました。

小さなマーケットの様子(上)、みんなでマーケットのテーブル等をつくる様子(下)

2016年 いよいよ春夏秋冬・毎週土曜日に!

4月16日の土曜日から、「食都神戸」という取り組みで地産地消を推進する神戸市と、このファーマーズマーケットのために立ち上げられた(一社)KFMとの共催となり、ここからは毎週土曜日に開催することで ”イベント” ではなく、毎週ローカルのものをお買い物ができる “インフラ” 的な場所、「生産者と消費者を継続的につなぐ」ことができる ”コミュニティ” を目指し継続します。

神戸市は開催場所の調整、(一社)KFMは運営と役割を分担。ここからはテントやテーブルなどの什器をハイエースに積み込み移動させることで、毎週の労力を減らす工夫も始めました。(ファーマーズマーケットの動画

毎週土曜日のマーケット以外にも、神戸市主催の年に一度のお祭り、食都神戸DAY・FARM to FORK、農家さんを講師に招いた「暮らしの学校」、神戸大学名誉教授・保田 茂先生を招き有機農業を軸に日本の経済を考える「保田ゼミ」、すまうら水産さんと連携した地引網のイベントなど、新しい取り組みをスタートしました。

2017年 新たなスタイルのマーケットも!

2016年12月に続いて、2017年1月以降も毎週土曜日で進み、春には神戸まつりが開催される週末に旧居留地・大丸神戸店横へはじめての出張マーケット。冬には、いまでも人気のスペシャルマーケット「淡河DAY」を初開催!「おうご」って読むんだよ!というところから、神戸の農村への興味関心が高まりました。秋にはポートランドから農家や食にまつわるメンバーが来神し「ポートランドDAY」を開催。調理デモンストレーションや販売、食事会なども行い交流を深めました。年末には多様な人たちと楽しみたいと「HOLIDAY MARKET」を企画。年末年始の準備や贈り物選びに、今でもいろんな方が訪れてくれます。また、マーケットのルールとして始まったコラボ商品も定着し、自然と加速。

今は全8ページで春夏秋冬と発行している季刊誌も、この年の春から。初回のみ4ページでスタートしました。

第1回淡河DAY(左上)、ポートランドDAY(左下)、旧居留地・大丸神戸店横マーケット(右下)
コラボ商品の紹介と季刊誌

2018年 「毎週から毎日へ!」FARMSTAND

「土曜日以外にもマーケットに参加する農家の農産物を購入したい!」との声を受けて「毎週から毎日へ」というキャッチフレーズで、3月末・北野坂にFARMSTANDをオープン。壁や家具の製作にマーケットの仲間たちも参加して、みんなで作りました。

マーケットではマーケット内料理教室「みんなでたべよう!」を月に一度ほどで開催。農家さんが作る水キムチやハーブウォーター、桃とすもものマリネやイチジクの豆腐クリームがけ、フライパンでつくる焼き芋など、神戸の食材でデモンストレーションと試食。楽しく美味しく学びました。これはコロナ禍直前まで継続したプログラムとなりました。

2019年 健やかなまち、心、からだ

神戸の様々な人や活動が紹介された本「ローカルエコノミーのつくりかた」が発刊され、このマーケットに興味を持った人たちの視察やインタビューも増えました。地に足ついた健全なまちには、ローカルにおける経済的循環もある程度は必要だと感じる人が増えてきたように感じました。

マーケットでは、健やかな心身をつくるのは、食と運動ということで、芝生を使ってPARK YOGAを企画。お日さまのもと、風や呼吸も感じながら、心身に向き合う時間は、この朝市にもぴったりです。YOGAだけでなく、いろんな運動とコラボレーションしたいです。

農家さんとの協業も一歩深まり、農村部に新しい拠点も完成!北区の古民家「farmhouse ケハレ」では、スクールの前身となる連続ワークショップもスタートしました。

2020年 コロナ禍にこそ、青空市を!

「なぜスーパーマーケットと同じように休まず食を届け続けられないんだろう」という疑問を強く抱きながら、4月と5月のマーケットはお休みしました。休業中はスタッフが直接配達するデリバリーに挑戦したり、医療従事者の方々へお菓子をお届けしたり、はじめてInstagramライブも開催。

そして「こんな時こそ屋外で開催する朝市は、ハイリスクの方々のお買い物に貢献できるはず!」と、神戸市と協議を重ね、コロナ禍での安心安全に配慮した独自の新たなルールを作り、6月に再開してからもお客さまも含めたみんなでコロナ禍のスタイルを模索しました。(一方通行、パネルの設置、飲食中止など)6月、マーケットから生まれた農家さんとつくる学校・MICRO FARMERS SCHOOLの募集を開始しました。

夏には飲食店をまんなかにしたナイトマーケットをはじめて企画。追加のルールも増えて息苦しい状況となっても、マナーや思いやりを持って協力し合えば、自分たちで神戸らしい場を作れるんだ!ということをお客さまと共に体験できた貴重な開催でした。
秋には、漁師さんとのスペシャルマーケット「OCEAN FRONT MARKET」にもチャレンジ!日頃は客船が並ぶ港にはじめて漁船が並び、その向かいには農家さんの軽トラという特別なマーケットになりました。飲食店が使用する食材は神戸のハモや魚!
この秋はスペシャルマーケット「西区DAY」が登場!西区を西と東に分け開催しました。西区らしく花苗農家さんが参加されたのも良かったです。そしてコロナ禍でもルールを守って年に一度のお祭り「FARM to FORK」も開催しました。

コロナ対策として一方通行やセルフレジを導入(左)、ナイトマーケット(右上)OCEAN FRONT MARKET(右下)
フライヤー(OCEAN FRONTマーケット、にし西区DAY、ひがし西区DAY)

2021年 旅するマーケット

2015年の社会実験から拠点としてきた東遊園地の公園再整備工事に伴い、このマーケットらしい新たな開催場所を求めて神戸市内を旅を開始しました。(東遊園地最後の開催の様子

6月5日は漁師さんにも協力いただき「ON THE BEACH」と題して、初の須磨海岸での開催。旅仕様の看板やフラッグもお目見えし、海風の洗礼を受けながらも幸先の良いマーケットとなりました。

梅雨休みを経て、7月は旧居留地・浪花町の道路上と三井住友銀行公開空地にて「試験開催」しました。これは神戸市と警察の長い協議の結果、実現。こうして場を切り開いてくれる公の姿勢に感動しました。それに応えなくては!という責任感も強く感じましたが、ルールを守りみんなでつくるというマインドがお客さまにも定着しているため、問題なく試験開催を終え、無事その後の使用が許可されました。「みんなでつくる」というのは正にこういうことで、それを可能にしたのは公民間の「信頼」でした。

昨年夏のOCEAN FRONT MARKETと、ポートタワーでのナイトマーケットからヒントを得て、神戸らしい夏のライフスタイルを提案したいと、8月〜9月初旬はメリケンパークの船着場にてナイトマーケットを予定し、多くの協議と準備を重ねました。しかし一度は開催できたものの、その後は台風、そしてまたの緊急事態宣言下で中止に。

神戸市とも議論を重ね、広々とした屋外空間で開催する青空朝市を必要とされる方々に向けて、淡々と食をお届けしていくということで、9月中旬に須磨海岸で再開。更なる厳戒体制の中、この日はリストバンドも登場し、検温のチェック体制なども強化しました。このとき開催されるイベントなどは一切無く、ファーマーズマーケットを担当する神戸市の方々は、大きな責任を負って再開の決断してくださいました。そして、それに応えてくれたお客さま。また、みんなでつくるということを目の当たりにしました。(マーケット再開のお知らせ

10月には漁協さんと共催して、初の垂水漁港での開催。続いて11月は旧居留地へと戻り、12月〜1月はデザインクリエイティブセンター KIITOにて。この一年の旅は、不慣れさと厳しいコロナ禍が重なり、官民共に無我夢中でやり切ったというのが実際のところです。

旧居留地・浪花町筋(左上)ナイトマーケット@神戸メリケンパーク(右上)須磨海岸(左下)垂水漁港(右下)

2022年 やっと楽しくなってきた!旅するマーケット2年目

新年のKIITOから、2月は旧居留地に戻ったり、3月は初の長田区・鉄人広場へ。4月は垂水、5月は須磨海岸、というように、2年目はほとんどが経験のある場所ばかりとなり、場所それぞれを楽しむ余裕が出てきました。コロナ禍も落ち着きを見せ始めたため、マーケット内イベントも再開。カモメンやウエストンなど区のキャラクターたちもやってきてくれたり、楽しい雰囲気も復活してきました。

KIITO(左上)、にし西区DAY(右上)、新長田鉄人広場(左下)垂水漁港(右下)

2023年 WE ARE BACK!

旅にも慣れ終わりに近づいた頃に、2月六甲道南公園、3月弓弦羽神社さんという、はじめての場所へお邪魔しました。中央区より東へ一度も旅したことがなかったため「マーケットが旅の最後にまさかの東神戸にやってきた!」と大歓迎してもらい嬉しかったです。

そして4月にはやっと東遊園地に生還!旅がうまくいかず途中で消滅してしまうかも、、と覚悟をしての旅出だったので、みんなでつくった旅、みんなで潜り抜けたコロナ禍を振り返り、思わず涙が溢れました。

そのあとはすっかり旅慣れたこともあり、東遊園地の追加工事や使用不可の日に加えて時々は、ご縁いただいた場所へとおでかけしています。私たちに軽やかさと強さを与えてくれた旅に感謝!

六甲道南公園(左上)、弓弦羽神社(右上)、東遊園地(左下)、サンセットマーケット@六甲アイランドマリンパーク(右下)

2024年 キラキラした光が集まる、神戸の夜景のように

神戸の魅力は、六甲山から見た夜景のように、キラキラした小さな個人事業主がたくさんいることだと思っています。だから(一社)KFMは、ローカルの食を通じて共感し合える農漁業者さんやお店の人が集まる「共に笑顔を生み出せる団体」でありたい。

そこに集うのは、一人でやりくりする人、デビューしたての人、店舗を持たない人から、家族経営、創業100年近い老舗など様々ですが、みんな対等で、尊敬し合っていて、清々しい。そこから生み出されたものも、きっと美味しくて気持ちいい。そんな小さな輪をこれからも大切に、共感してくださるみなさんと共に守り育てていきたいです。

いつも温かいご理解とご協力をありがとうございます!