Farmers Market 地産地消を考えるマーケット

初夏の週末の2日間、東遊園地公園の一角でファーマーズマーケットを開催しました。様々な農村と街が近接する神戸の地。生産者と消費者が近づき理解しあい、ともに地産地消を進めるための社会実験です。

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このマーケットでは神戸市内で活動する農家9組が参加、様々な季節の野菜を販売しました。野菜のみならず、飲食店の協力により実際に神戸産の野菜を使った料理をブランチとして食べられるような仕掛けを行ったり、農園を訪れるためのファームビジットプログラムの予約受付、地産地消に関するアンケート調査を行いました。アンケートでは約400名を超える方々から様々なお声を頂きました。ご協力頂きました皆様、ありがとうございました。

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ビルやマンションが密集する神戸市の中心地から30分ほど車を走らせれば、農地が目の前に広がり大いに地産地消の可能性を感じさせてくれます。買う場所や売る場所として、新しい選択肢はないだろうか。そういったことを頭の中で巡らせながら、神戸の風土やマーケットにおける新しい価値感をどう共有していくか、そしてこれからこのファーマーズマーケットを如何に継続していくかなど、この2日間で農家さんを中心に出店者の方にお話をお聞きしてきました。

 

 

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《西区の農家さん》

チアファーム(浅川元子)

神戸里の華農園(今城里華)

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チアファーム 浅川さん

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神戸里の華農園 今城さん

浅川さんと今城さんのお二人は西区の農家さん。お二人とも、新規就農で浅川さんは4年生、今城さんは2年生。

 

—神戸の中心地で野菜を売るということに対して、どんな印象ですか?

浅川:「こんな都市近郊で農業をしているのに、小さい一軒の農家だと中心地のスーパーに自分たちの野菜を届けることはなかなか難しい。やはり大きいスーパーには野菜のバイヤーがいて、安定的そして大量に供給できることが必要条件なので、珍しい野菜を作っても受け入れてくれるところは少ないんです。今回のファーマーズマーケットでは、珍しい野菜を持って行っても食べ方まで直接教えることができるし、そして何より嬉しいのが朝採れたての野菜を出すことができるところです。」

 

—飲食店とのコラボについてはどうでしたか?

今城:「実際に私たちの野菜を使った料理が横のブースにあるので、視覚だけでなく匂いも感じてもらうことができ、調理イメージをお客様に伝えやすい。マーケットで手のこんだ試食を提供することは難しいので、とても相性がいい組みあわせだと思います。」

 

浅川:「自分だけだと生でしか試食をできないけど、こうやって焼いてもらうことで甘みが増したり、香ばしくなったり、いい匂いがしたりして、肌で感じてもらえることが嬉しいですね。」

 

今城:「将来、このマーケットで集めた野菜でシェフのおまかせ料理を作ってもらえて、それをデリで持って帰ることができたら面白いかもしれませんね!」

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協力レストラン・チアーズ 樋野さん

 

—飲食店と農家さんによるコラボ出店はどうでしたか?

樋野さん:「採れたての野菜を、その日の内に料理として出すことができることが何より嬉しいですね。お客様がいきいきとお買い物をして、ゆっくり時間を過ごしている姿がとても素敵でした。」

 

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《西区の農家さん》

ナチュラリズムファーム(大皿一寿、大皿純子)

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—神戸でファーマーズマーケットをやる意義はありましたか?

大皿(純):「私たちのお客様で、以前東京から送ってもらった無農薬・有機野菜を神戸で購入していた方がいたんです。神戸はこんなすぐ近くに農地があって、野菜を作っている人がこんなにいるのに、なぜうまく田舎と都市をつなぐことができないんだろうと感じました。このファーマーズマーケットがそういった野菜を求める方との窓口や架け橋の役目を担うことができたらと思います。」

 

—お客様の反応はどうですか?

大皿(一):「私自身、野菜をただ単に売るということが先ではなく、お客様とのコミュニケーションを大事にできている気がします。神戸には野菜に興味がある人が多いということが発見できたので、これからは神戸の気候にあう西洋野菜を主軸に打ち出していきたいと考えています。また飲食店の方と農家は繋がる場が少ないため、とても良い機会となりました。神戸は外国人の多い町でもあり、野菜を介して文化の融合にもなるのではないかと夢を膨らませています。」

 

大皿さんとお話をしていると、お隣の飲食店ブースCaldoの伊藤さんとこんな会話に。

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伊藤さん:「畑を置いて丸1日出店というのは大変でしょう?どうですか?」

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大皿(一)さん:「妻と子供と一緒に出店しているので、いつもの配達もできましたし、マーケットが14時までなのでこれから帰ってもまだ収穫に間に合うんです!次の日の準備もできますし、とても有意義な時間になりました。」

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大皿さんとコラボ出店した北区有馬のパン屋・イーゲルの井関さん

—今回出店してみて何か発見はありましたか?

井関さん:「何年も飲食の仕事をしていると、どうしても使う食材や作るメニューが定番やある程度決まったものになってしまうんです。今回のようなファーマーズマーケットで農家さんと出会い、野菜に出会い、新しいメニューの開発にもつながりました。」

 

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《西区の農家さん》

キャルファーム神戸(大西雅彦)

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キャルファーム 大西さん

 

—他のファーマーズマーケットやマルシェと違うところはありましたか?

大西:「飲食店とのコラボをして出店するということが初めてでした。何より作りたいものを作るというのが、僕のやり方。野菜を作るのはプロだけれども、それを使うことはプロではないんです。そういった意味で、飲食店の方とコラボで出店できることはとても魅力がありますね。」

それに対し、コラボ出店者のカルドさんは、

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伊藤さん:「そこにある物を使って、ライブ感のある料理の提供ができたら面白いかもしれませんね。野菜につけてすぐ食べることができるマヨネーズなんかを作ってくるだけでも楽しいでしょう?単なる屋台ではなく、素材の味を楽しむ状況が作れたらいいですね。」

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—継続的にマーケットへの出店はできそうですか?

大西:「どうやったら継続できるかではなく、出てきた課題を一つ一つ整理して継続させていくんだという気概が必要ですね。ただ儲けることばかり考えるのではなく、売ることで僕たちも勉強をして、お客様に教えてもらう。スタッフとも、それを意識しながらやっていきたいと思っています。」

 

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《西区の農家さん》

安尾拓也

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—直に自分がつくった野菜を売ってみてどうでしたか?

安尾:「お客様の顔が見えることで向上心がぐっとあがりますね。また新しいものを作ったときの反応をダイレクトに感じることができるので、ファーマーズマーケットがあることで新しいことへの挑戦もしやすくなると思います。農業は土の成分のコントロールが非常に重要で、虫食いがあるからといって、必ずしもよい野菜であるとは限りません。こういった場でのコミュニケーションからしか伝えられないことがたくさんありますね。」

 

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またファーマーズマーケットにお越しいただいた、消費者の方にもお話をお聞きしました。

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建築家の北川さん

 

—ファーマーズマーケットの価格帯はどうでしたか?

北川さん:「高いという印象は受けませんでしたね。安いという指標は不安要素でもあると考えていて、こうして作っている人や過程が見えることで、気軽に安心できる野菜を買うことができるのはとても嬉しいです。また都市は田舎があるから成り立っているということを可視化するためにも、ぜひ続けて欲しいです。」

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柿沢さん

 

—ファーマーズマーケットの雰囲気はどうでしたか?

柿沢さん:「とても気持ちのいい空間で、ぜひ生活の一部になってほしいと思います。農家さんの智恵や保存食などについても情報交換したり、勉強したりする場になったら嬉しいですね。」

 

牧野さん:「農家さんと直に話す事が出来るので、本を片手にたわいもない会話をしたり農家さんのこだわりを聞いたりする中で、ズッキーニならこの農家さん、トマトならこの農家さん!というようにファンがついていくような気がします。そうやって農家さんと親しくなっていくうちに、沢山出来たお野菜を頂いたりする事もあるのですが、私の育った国東半島では今でもその野菜の入った籠や包みに、ちょっとしたお惣菜や保存食などを感謝の気持ちを一緒に詰めてお返しするんです。 そんな昔の日本ではよくあったお裾分けの習慣がここ神戸でもEAT LOCAL KOBEを通してまた広まっていけば素敵だなと思います。」

 

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《協力飲食店》

マルメロ(デリ)

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—今回のファーマーズマーケット、飲食店という立場での参画はどうでしたか?

安藤:「私たち飲食店は、食べる人と作る人の間にいる存在です。『どんなものを食べるかで、体も心も変わっていく』という、マクロビの考え方をよく意識しています。以前、野菜づくりを始めたこともあったけれど、私にとってはすごく大変で諦めてしまいました。そういったこともあって、いっそう食と作の間をつなげることがしたいなと思ったんです。」

 

—飲食店にとって農家さんとの繋がりができることはどうですか?

安藤:「知っている人の野菜を使えることが単純に嬉しい。料理しながらその人の顔を思い浮かべたりしますね。今回のマーケットは日常と非日常がかけ離れすぎず、とても居心地が良かったです。スペシャルだけど身の丈にあったというか、そんな感覚ですね。そして、今後もじわじわとやっていくこと。」

 

安藤さんによるファーマーズマーケットのデリレシピ集はこちら

 

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《北区の農家さん》

芝卓哉

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—量り売りは手間じゃないですか?

芝:「人それぞれ使いたい大きさや数は違うんですね。大きさにバラつきがあるものは普段だと出荷しにくいんですが、こういったファーマーズマーケットでは出しやすいですね。そして何よりも、野菜は一目惚れなんです!お客様が実際に手にとってみて、納得したモノを選ぶということができたらいいですね。」

 

—神戸で農業をすることについては?
芝:「神戸北区は日陰になる日も多いですが、大風や台風などの災害が少ない土地なんです。作物が風に倒されたり、猪に食べられたりすることもありますが、また幹を伸ばし、立ち上がるする姿に生命力を感じます。特に種を植えたあとは明日が楽しくなるんです。農業を営んでいる人は、自然と前向きな人や優しい人が多いんですよ。」

 

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《北区の農家さん》

森本聖子

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—ファーマーズマーケットはどうでしたか?

森本:「売ることだけが目的ではないんです。ただ持ってきて、売って終わりではなく、この場で繋がり、知り合うところだと考えています。神戸には、普段から山奥でひたすら土や風、水に向き合い野菜を作っている人が実はいっぱいいて、普段はあまり人にも会わないんです。しかし、ただ野菜だけが世に出ていってしまうのには何か違和感を感じていて、こうやって実際に売る場があることはとても気持ちがいいですね。」

—2日間の連日開催はどうでしたか?

森本:「会期が2日間あったことで、1日目の経験を生かして見せ方や接客の仕方を工夫することができました。またお客さんから、『昨日買ったズッキーニが美味しかったよ!』と、直接お礼の言葉をもらうこともでき、とても新鮮でした。」

—ファーマーズマーケットをもっと日常的に開催するために継続する必要がありますが、農家側の意見としてなにか良い方法はありますか?

 

森本:「週2日、中央区に野菜の配達に来ているのですが、やはり終日時間がとられてしまうんですね。仮にその時間をファーマーズマーケットに当てたとして、配達先の飲食店の方がこの場に買いに来てくれるような状況が生まれたら継続した出店も可能かもしれません。飲食店の方も、やはり実際に野菜を見て、触って買いたいと思うんですね。そうすると私たちも新しい野菜の提案もしやすいですし、飲食店に頼まれた野菜だけではなく、『今日はこんなのが入ってますよ!』というようなコミュニケーションもとることができるなと感じます。」

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各農家さんのお話から、このファーマーズマーケットが神戸における地産地消のプラットフォームのような機能をまち全体をひっくるめて担うことができたら、とても面白いしなんだかワクワクしてきます。農家さんが配達で運転している時間をマーケットの出店時間に変換し、飲食店も自らファーマーズマーケットで野菜を仕入れることで新しい出会いや発見があり、何より新鮮な野菜を手にとって確かめることができる。そして市民にも開かれた場となり、ファーマーズマーケットがイベントではなく日常の風景となっていく。そんな想像が頭のなかで膨らみます。

 

次回の開催は秋。どうぞお楽しみ!

 

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ファーマーズマーケットのデリレシピ集はこちら