アメリカ・ポートランドにて開催!KOBE FOOD&SAKE GATHERINGイベントレポート

2022年11月3日の夕刻、アメリカオレゴン州ポートランド市ダウンタウンにあるエコトラストビルにて、「KOBE FOOD&SAKE GATHERING」という神戸の食や酒文化に関する交流イベントが開催されました。2019年にポートランド市のウィラー市長訪問団が神戸市を訪れ、「経済とまちづくりの交流促進に関する覚書」を交わしたことをきっかけに、神戸市とポートランド市における公式な交流事業がスタート。その後、コロナ禍を経て、久元喜造神戸市長訪問団によるポートランド訪問がこの秋やっと実現したのです。そこでポートランドの方々を招いたこのイベントが開催されました。

ポートランド市のダウンタウンにある歴史的建造物・エコトラストビルのイベントスペースで開催された。
約200名が参加し、両市のいままでの市民交流とこれからの可能性を体感できるイベントとなった。

KOBE FOOD&SAKE GATHERINGのメイキング動画です。よろしければまずはこちらをご覧ください。

○ショートバージョン:(1min) https://youtu.be/_xDZmz9Rj_Q
○ロングバージョン:(5min) https://youtu.be/wRI3XQUn79A

EAT LOCAL KOBEの活動としてのポートランドの人々との交流は、2015年の春に神戸から関係者がポートランドを訪れ、食ビジネスの振興について色々と教えてもらったことから始まりました。そこからこれまで、ポートランドの方々には随時、的確なアドバイスを頂き、先進的な取り組みを数多く紹介頂いたことにより、EAT LOCAL KOBEの取り組みでも様々なことに挑戦が出来たと思っています。

神戸のファーマーズマーケットの原型となったポートランドのファーマーズマーケットを散策。

特に大きな影響を受けたポートランドのファーマーズマーケットからは「木の下で開催しなさい」「毎週続けなさい」というアドバイスを頂きました。それを大切にしながら、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETは現在8年目を迎えています。その後、ポートランド在住・神戸市北区・弓削牧場の長女である篠原杏子さんと出会い、彼女のコーディネートで様々なポートランドの方々との交流事業が実現してきました。

ポートランド在住のアーバンファーマー&シェフ、ステイシー・ギブンズさんの率いる農家・シェフ・食事業者によるSeed to Plate Tourのチームは、2016年と2018年に2度神戸を訪問してくれました。その際、ステイシーさんは食都神戸DAY/FARM to FORKにて久元市長との対談イベントに参加したり、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETにてPORTLAND POP UPブースを出店してくれました。2度目の来日では、料理人のアルシア・グレイ・ポッターさんと共に、ポートランド的なバターナッツかぼちゃの使い方、フレーバーポップコーンなどのクッキングデモをしてくれました。
また、神戸の生産者との交流を深めるため、灘のお酒を使ったポートランドスタイルのしゃぶしゃぶディナー会を企画し、意見交換を行いました。

当時のイベント募集記事はこちら

2016年のFARM to FORKでトークするステイシーさん。
神戸市北区淡河町の森本聖子さんの農場を訪れ、交流した。
ファーマーズマーケットで買い物を楽しむスイートハニーファーマーシーのジェイミーさん。
ファーマーズマーケットでのポップアップブース。瓶詰め商品やコーヒー、ファームグッズなどの販売をしてくれました。
参加者で記念撮影した様子。


2018年には、サリー・ボウワーさん(来日時は、ポートランドのアイスクリーム会社レシピ担当)は、大阪で行われたポートランドフェアのために来日し、神戸の農家や弓削牧場とコラボレーションしたアイスクリームのレシピ提供をしてくれました。(きなこや有馬山椒、いちごを使用)また、当時FARMSTANDで開催していた子ども食堂にも参加して、アイスクリームのデザートを作ってくれ、子どもたちは大喜び!
(当時の弓削牧場による告知記事はこちら


2018年当時プロスパー・ポートランド(ポートランド振興局)のスタッフでもあり、BBQソースブランドのオーナーでもあるトニー・キャンベルさんが来神され、彼のBBQソースを使ったBBQディナー会を開催しました。上記の様子は、その後、コロナ禍の2020年に開催された「神戸×ポートランドBBQレシピ交換会」の様子です(北区・NIUfarm三宅ゆき江さんとInstagramライブでの開催)。コロナ禍は交流が困難となっていましたが、そんな中でもオンラインイベントとして、YAKISOBA PROJECT(ポートランド風やきそばパンとハイボールを楽しむ会)がポートランドで開催されました。使用されたソースは、神戸の老舗オリバーソース!(KOBE INTERNATIONAL CLUB主催)。

YAKISOBA PROJECTに合わせて、EATLOCALKOBEでもオンラインのカクテルレシピ交換会(神戸のバーテンダー小野さんとポートランドのバーテンダーロビンさんによる)を開催。

私たちも神戸から2015年の訪問以降3度ポートランドを訪問し、来日されたステイシーさんのファームや先進的なアーバンファームを見に行ったり、オーガニックラーメン製麺ビジネスを運営するローラ・ミホランドさんのアレンジにより先進的なCSA農場、スーパーマーケット、様々な食の先進的施設を見学させてもらいました。そしてポートランドの方々がやって頂いたように、神戸からも様々な事業者と一緒にポートランドを再訪して、食や農を知っていただくイベントができたら良いねという話をしていました。

「KOBE FOOD&SAKE GATHERING」において、これまでの交流の中心となった篠原杏子さんによるスピーチ。ポートランド側の中心だったローラさんもこのあとにスピーチをしてくださった。

こうして今回のKOBE FOOD&SAKE GATHERINGでは、これまで神戸と交流し、神戸に愛着を持ってくれているポートランドの方々にも参加して頂き、すべての企画を進めました。食事は、ポートランド側の料理をステイシー・ギブンズさんのチームが担当。同じく来神経験のある料理人アルシアさんも参加、前述のサリーさんはデザートを担当。また、神戸側のためには、来神経験があるFlying Coyote Farm, Vibrant Valley Farm, Fiddlehead Farmの農場を訪問し、当日の食材となる野菜や、会場デコレーションに使用するものを提供していただきました。神戸側の料理人は、ポートランドから神戸に来られた方々をお連れした「いたぎ家」という野菜居酒屋の板木平将人さん、匠さん兄弟。ポートランドの農家さんから提供された数々の野菜で6種のお惣菜を提供しました。会場装飾は北区の茅葺職人・相良育弥さんが、現地の牧草や美しく紅葉した落ち葉で仕上げました。いずれも「今あるもので創る」というEAT LOCAL KOBEが大切にすることが実践され、地産地消に親しむポートランドの方々にも強く共感頂けました。そのほか、農家としてポートランドの人々と交流を重ねてきた森本聖子さんや、記録担当として食の活動にも積極的な写真家の岩本順平さんとチームを組みました。また神戸の食文化として「灘の酒」を知ってもらうために、剣菱、宝酒造、大黒政宗、白鶴が現地でポップアップブース出店し、バーカウンターでは福寿、菊正宗、Openairのビールや環というブランドの酒などが振舞われました。また神戸レザーやマルカン酢、オリバーソース、マルヤナギなどの商品も展示されました。運営はJASO(オレゴン日米協会)の事務局・宮永かおるさんと共に進め、ポートランド在住ボランティアの方々約20名が集まってくださいました。当日の料理、酒、ディスプレイともに大変好評で、是非神戸を訪問もしくは再訪したいとの声を数多く頂戴しました。

当日の様子。料理を担当し「いたぎ家」のお二人は、ポートランドのドーナツ店でイベントの後日行列に並んでいたら、店の人から「あのイベントの人ですね!」と声をかけられ、ドーナツをプレゼントされたそう。
当日配布したメニューとブース紹介。ステイシーさんは、ほうずき・根菜・コリアンダーの焼きそばパン、アルシアさんは、ビーツローストのポン酢・ヘーゼルナッツ・ケールふりかけ、サリーさんは、ローストいちじくの葉っぱのメレンゲとヘーゼルナッツときなこのバターブラウニー。いたぎやチームは、梅のポテトサラダ、ポートランド野菜のベジ手毬寿司、野菜のお惣菜4種が提供された。

 

運営メンバー及びポートランド在住の運営ボランティアによる集合写真。ポートランド側ではJASO(オレゴン日米協会)の宮永かおるさん(写真右下)に大変お世話になった。

ポートランドではスーパーマーケットがファーマーズマーケットのスポンサーになったり、たくさんあるクラフトビールの醸造所も互いに高め合っていたりと、一見ライバルと思える関係でも、そうではなく一緒に業界のマスを拡げる良き仲間という意識があるという話を聞きました。また行政も小さな個人店をしっかりサポートしていくことで、着実な雇用と発展を促していくマインドがあるという話も。「小さきことは美しきこと」。小さな循環とつながりがまちを強く魅力的にしていくんだということを再確認しました。そして今後もポートランドと神戸における市民レベル、ビジネスレベルでの交流が続くためには、お互いの街のビジネスや活動の魅力をより高め、「訪れてみたい!」「互いの成長が友人として嬉しい!」というような、お互いつながりに誇りを持てるような関係に昇華させることが大切だと感じた旅でもあります。これまで両市で蒔かれてきたタネを官民チカラを合わせて育み、そこからまた良いタネをつないでいけるよう願います。

text: 一般社団法人KOBE FARMERS MARKET 小泉寛明