高山なおみさんと神戸の暮らしシリーズ ・春 「海辺のピクニック」

高山なおみさんと神戸の暮らしシリーズ ・春 「海辺のピクニック」
料理家・文筆家である高山なおみさんと一緒に「神戸のおいしいもの」をお届けするシリーズ。この一年は食に加えて、神戸暮らしの楽しみもあわせて、季節ごとにご紹介していきます。

秋にはキッチンに集まり一緒に料理しながら「アペリティーボ」、冬には美味しいものを持ち寄る「ポットラック」と続き、そして春。なおみさんと楽しむのは、簡単なお弁当を持って出かける「ピクニック」です。

今回は、神戸っこがまるでリビングのように集まる場所・須磨海岸へ。ビーチといえば夏のイメージがありますが、屋外で過ごしやすい春や秋は、お気に入りの大きな布を広げ風に吹かれながら、時間を忘れておしゃべりするのが最高!自然とまちが近い神戸で暮らすひとにとって、ピクニックは身近なものなのです。

今回お誘いしたのは、なおみさんがおしゃべりしたかった画家のマメイケダさん。なおみさんと同じように、マメイケダさんも神戸の坂の上に引っ越して来られたそうです。さあ、そんなお二人と一緒にピクニックに出かけましょう!

高山なおみさんと巡る・神戸の暮らしシリーズ・春(レシピ付き)、どうぞお楽しみください。

 

 AM 北区・たくやさんの畑で

5月のある朝、まちなかから六甲山トンネルを抜けて北区淡河町へ。FARMSTANDマネージャー・池田拓耶さんが野菜を栽培していると聞いて、高山なおみさんとあゆみさんがやってきました。「たくちゃんは、FARMSTANDに行くといつも声をかけてくれるんです」となおみさん。

なおみさん「たくちゃん〜!」

たくやさん「おはようございます。ほんとに来てくれたんですね!」

たくやさんは、FARMSTANDで働きながら、有機栽培で兼業農家を目指すマイクロファーマーズスクールを卒業し、卒業後は淡河町で畑を借りて準農家・ネクストファーマー制度の研修中です。

なおみさん「この間あゆみさんからいただいた、スナップエンドウとピーテンドリル、美味しかったな〜」

たくやさん「僕もいろんな豆を育ててますよ。スナップエンドウから収穫しますか。ちょっと出荷ができないくらい大きくなっちゃってますけど(笑)」

これがピーテンドリル。スナップエンドウの巻き毛のような新芽です。柔らかいうちは茎や葉っぱ、花も豆の味がしておいしいんです。

大きく育ったスナップエンドウ・絹さや・グリンピースと、3種類のお豆を収穫。

なおみさん「たくちゃんはどれくらい畑に来てるの?」

たくちゃん「ぼくは週1で畑に通っていて、おとんにも手伝ってもらってます」

なおみさん「お父さんと仲良しなんだね」

たくちゃん「前は全然喋らなかったけど、一緒に畑を始めてからは、毎日のように喋ったりLINEでやりとりするようになりました。ケンカもしますけどね(笑)」

なおみさん「へ〜、いいねえ。こんなに景色のいいところで作業をしていたら、気持ちも広々するだろうね」

ニンニクの芽も出てきていました。ニンニクは春になると、花を咲かせるために茎をグングンと伸ばす。花が咲かないうちに茎を引っ張って抜き取るとおいしく食べられます。ポンポンっと抜いていたら、あれ!ニンニクごと抜けちゃった!

新ニンニクは、まだまだ赤ちゃんサイズ。

なおみさんが大好きなビーツも収穫。

なおみさん「こんなに収穫できました。たくちゃん、ありがとう。またFARMSTANDでね!」

 

AM 森本聖子さんの畑へ

3年前、神戸の小さな旅①「おいしいを見つける、海と田畑の神戸旅2021」でもおじゃました森本聖子さんの畑へ。

聖子さんは、少量多品目野菜といちごの農家でありながら、マイクロファーマーズスクールのメイン講師(たくちゃんの先生)として、農家になりたい人たちのサポートもしています。冬〜春がシーズンという、いちごも収穫させてもらいました。

ハウスに入った瞬間、いちごのあまい香りが…!種まで真っ赤になっているのが、完熟の印。

おもわずパクリ

なおみさん「んー!甘くてみずみずしい!」

その他にも、ほんのり桃色なあやめ雪蕪と小蕪を収穫。

アーティチョークも実をつけ始めていました。

収穫した野菜は、乾燥・蒸れを防ぐように新聞紙にまいて持ち帰ります。

赤玉ねぎは、収穫してすぐはまだ赤くなくて、しばらく日陰においておくことで中まで赤くなるそうです。知らなかった!

聖子さんの愛犬・ダリちゃんもお見送りしてくれました!

完熟したいちごは柔らかいから、そっとお膝の上に。さあ、急いで帰ろう。

淡河から車で20分、六甲山トンネルを抜けたら海とまち。

 

なおみさんのお家に着いて

すぐに使わない野菜やいちごは、風がよく通る涼しい廊下に。

簡単なお味噌汁をさっと作ってお昼ご飯。たくちゃんの絹さやがシャキシャキで甘い!

 

ピクニックのお弁当づくり

まずは、窓辺でスナップエンドウとピーテンドリルの下処理から。

スナップエンドウはたくちゃんに教えてもらったように、ちぎったヘタの方から筋取りしたら、両端ともスーっと取れて気持ちいい。

なおみさん「ピーテンドリル、前に食べた時はまだ柔らかくて、葉っぱも茎も丸ごと食べられたけど、今はちょっと硬くなってきているね。食べられるところだけいただきましょう」

今回は、柔らかい蔓や葉っぱとお花だけを分けておきます。

 

新にんにくとスナップエンドウのオリーブオイル炒め

新にんにくは、みずみずしくて透明感があり、香りも柔らか。薄皮まで食べられそうです。

フライパンにオリーブ油とにんにくを入れて火にかけます。しゅわしゅわと音を立ててきたら、フライパンを傾けてにんにくの周りがほんのり色づくまで熱し、一度お皿に取り出しておきます。

ニンニクの香りがついたオリーブオイルにスナップエンドウを入れます。

なおみさん「弱火でじっくりと焼きつけます。表面にまんべんなく焼き目がつくまで、あまりいじらずに放っておくんです」

あゆみさん「茹でずにそのまま焼くって、シンプルでいいですね」

仕上げにニンニクを戻し入れ、塩をひとふりしたら完成!

なおみさん「大きくなりすぎたスナップエンドウは、大きいからこその味の濃さにびっくり。よく焼くと、中がねっとりとして美味しいですね。赤ちゃんみたいな新にんにくは、香りも柔らかくてとっても甘い!たくちゃん、すごいなあ」

 

ピーテンドリルの白和え


さっき分けておいた、ピーテンドリル(右)と、花(左)

ピーテンドリルは、さっと湯がいて細かく刻み、固く絞っておきます。(やわらかい時期なら、なまのままでも)


絹ごし豆腐の水切りは、キッチンペーパーで包んでおくだけ。

なおみさん「今日は外で食べるので40分ほどおくけれど、普段は20分くらいかな。水切りしすぎると衣が硬くなってしまうから」

白ごまを煎ります。

〈衣の材料〉
白胡麻 大さじ1と1/2
絹ごし豆腐 小2パック(160g)
白味噌 大さじ1
きび砂糖 大さじ1
塩 小さじ1/2
ごま油 小さじ1/2

すり鉢で白ごまをよくすりつぶし、豆腐と調味料を次々混ぜて衣の味を決め、最後に刻んだピーテンドリルと花を加えたら完成!

なおみさん「白和えは少し甘めがおいしいなって、このごろよく思います。普段はここに、お酒をほんの少しだけいれます。そうするとコクと甘味が出るんです。今日はお弁当だからできるだけ水分が少ないほうがいいので、入れないでおくね」

 

サンドイッチ

なおみさん「本当にきれいな蕪だね。皮はそのままで、硬そうなところだけ包丁で薄く剥いておこうかな」

カブはスライスして、塩をまぶし、レモンを絞ってマリネに。

なおみさん「文ちゃん(秋色のアペリティーボでご一緒した山本文子さん)が、NYのパン屋さんのお友だちに聞いてくれたんだけど、フランスパンはカットしたら切り口を重ね、アルミホイルで包んでおくといいみたい。そのままオーブンで焼けば、昨日買ったパンでも焼き立てみたいになるんだって。さて、どうかな?」

なおみさん「わー!ほんとに焼き立てみたいにパリッとしてる。いいこと教えてもらったね」

今日は、須磨で「神戸サーモン」を買って、海辺でサンドイッチを仕上げます。お家では下準備として、赤玉ねぎをスライスし、パンにフレンチマスタードと粒マスタードを片面ずつ塗っておきます。

ピクニックのお弁当ができました!

さて、須磨へ出発です。

 

須磨海岸にて、潮干狩り

須磨海岸では、毎年4月下旬〜6月上旬にかけて、すまうら水産の漁師さんが潮干狩り場をオープンします。

なおみさん「潮干狩りなんて、子どものとき以来で久しぶり!」

なおみさんのお友達・マメイケダさん(マメちゃん)も合流して、潮干狩りスタート。マメイケダさんは、昨年大阪から長田区に移住された画家さんです。

なおみさん 「あ!見つけた!」

すまうら水産の若手漁師・佐藤さんが様子を見に来てくれました。

佐藤さん「採れたアサリを振って音を聞いてみましょう」

マメさん「え?なんでですか?」

佐藤さん「見つけたアサリは、生きているかどうかの判別をするんですよ。手の中で貝を振り、貝同士が当たった音の違いで判別ができるんです」

マメさん「ほんとだ、すごく微妙に音が低いのと軽いのがありますね」

なおみさん「わたしのも音を聞いてもらっていいですか?」

音で判別するのは、なかなか難しい…。結局、みんな佐藤さんに確かめてもらいました。

佐藤さん「砂浜を裸足で歩く機会も少なくなってきてるので、潮干狩りが自然にふれる機会になれば嬉しいですね。子どもたちは、アサリ以外にもカニとか他の生き物を僕に見せにきてくれたりして、環境学習の一貫になっているのかなと思うと嬉しいです」

あゆみさん「え!ここにいろんな生き物がいるんですか?」

佐藤さん「はい、すぐそこの堤防でもよく観てもらうと、イソギンチャクやカメノテ、牡蠣とか、いろんな生き物がいるんですよ。でも、やっぱり子供は大人とは違う視点を持っていて、僕がずっと観ている場所でも発見したことのない生き物を見つけてくれる子もいたり。子供はすごいな〜と驚かされます」

なおみさん「佐藤さんも、海の生き物が好きなんですね〜」

佐藤さん「はい、物心付く前から生き物が大好きでした。大学では生物地球学部というところで、昆虫や植物、恐竜や地学・気象学など色々学びました。
水族館でいろんな種類の魚を観るのも好きですが、自然のなかで魚がどんな風に生きているのかに興味が湧いて、漁師になりました。だから、今は仕事が半分趣味みたいなものですね」

足だけでも海に入ると気持ちいい!

マメさんもすっかり海を楽しんでいるようです。

夕暮れ前、海辺のピクニック

まずは、なおみさんもマーケットでお馴染みのIN THADOOR BREWINGのクラフトビールで乾杯!

マメさん「これ、人参のビール?おいしいね」

あゆみさん「神戸の水と人参を使ってるんですよ。他にも、いちじくや間引き葡萄のビールも持ってきましたよ」

なおみさん「さあ、食べよう!今日、収穫してきた野菜で作ったんだよ」

マメさん「そういえば、朝から北区に行くって言ってましたね」

なおみさん「わたし、サンドイッチ作るね」

たった今、すまうら水産の駅前直売所で買ってきた神戸サーモンと、今朝収穫した赤玉ねぎ、弓削牧場さんのフロマージュ・フレを挟んでいきます。

なおみさん「サーモンが肉厚ですごくおいしい。パンにバターを塗り忘れたし、塩も持ってくればよかったな。外で食べるときには、しょっぱいくらいの方がいいことを忘れてた」

あゆみさん「そうですよね。次はお塩も持って、電車で来ましょう。わたし夕方のピクニックが大好きなんです。風が吹いて涼しくて、夜までいたら星空も見えますよ」

日が暮れて夕日をみながら、VIVA VIN VIVANT・宮本さんが北区で育てた葡萄でできたナチュラルワインでまた乾杯。

マメさんは気持ちよさそうに、アサリの選別をしてくれた佐藤さんの絵を書いています。

マメさん「佐藤くんも、作家みたいな人でしたね。もっと話聞きたかったくらいです」

あゆみさん「アサリたくさん採れましたね!みんながどうやって食べるか気になるな〜」

なおみさん「じゃあ、それぞれが作ったものを写真で見せ合いっこしましょうよ」

マメさん「私は料理苦手だからな〜。でも採れたてを調理して食べるのは楽しみです。」

 

畑から海へとドライブした、楽しい春の一日が終わりました。お家に帰ったら、ひと晩アサリの砂抜きを忘れずに。みんなのアサリ料理が楽しみですね。

 

坂の上の小さなお家

数日後、マメさん宅に遊びに行かせてもらいました。マメさんが「ここ、いいな」と、引っ越したくなったお家は、坂の上の海が見える、神戸らしいお家。

まちの向こうに海が見える2階の画室。古い木製の窓が素敵です。
画室に入るときは「おはようございます」と気持ちを切り替えて。
小さな庭と、古い椅子。最近やってきたとは思えないくらい馴染んでる。
須磨海岸でのピクニックの写真を、かわいいちゃぶ台で一緒に見ました。

あゆみさん「アサリどうでした?」

マメさん「私はスパゲッティにしました。アサリの出汁がしっかりでて、私でも美味しくできました!また写真送りますね」

 

みんなのアサリ料理(レシピ付)

なおみさん「 あさりとカブのなんちゃってリゾット」

撮影:なおみさん

なおみさん「なんちゃってなのは、冷やご飯を使うから。ものすごくおいしくできて、ぺろりと食べてしまいました。やっぱり、ついさっきまで海にいたアサリは精が強く、おだしの旨味が濃厚でした。たくちゃんの新にんにくも、聖子ちゃんのかぶも、かぶの葉も、みずみずしくておいしかった!」

ーレシピー

少なめのオリーブオイルでかぶを焼きつけ(新にんにくとスナップえんどうを炒めたオリーブオイルをフライパンごととっておいたので、そのまま使いました)、いちど取り出す。同じフライパンで新にんにく炒め、砂出しをしたアサリを加える。強火にして白ワインを加え、口が開くまで蒸す。アサリだけ取り出し、アサリのだしに水を少し加えて、焼いたかぶを戻し入れ、冷やご飯をパラパラにして加える。ご飯にスープがいきわたったら、アサリとざく切りにしたかぶの葉を加え、黒こしょうをひいて出来上がり。器に盛って、エキストラバージンオリーブオイルをひとまわしして食べる。

あゆみさん「アサリの和風ミルクスープ」

撮影:あゆみさん

あゆみさん「酒蒸ししたアサリに、牛乳と、エンドウの莢を入れて煮ます。莢の出汁が出たらお箸で取り除き、最後にズッキーニとエンドウの実を入れてサッと炊いたら完成!野菜はフレッシュさも味わいたいので炊きすぎないのが好き。それと、酒蒸しはおいしい日本酒を使うのがポイントです。あとはお好みで塩胡椒。せっかくだし、私は海の塩でいただきました。フライパンひとつでできるお手軽なスープです」

おまけ・文子さん「神戸トマトのボンゴレロッソ」

なおみさんがアサリをおすそ分けした文子さんも、アサリ料理の写真を送ってくれました。

撮影:文子さん

文子さん「いつもはアサリは「ボンゴレビアンコ(白)」だけど、神戸のトマトを最後に混ぜたかったので「ボンゴレロッソ(赤)」ロッソは、トマトペーストも少し入れます。アサリの旨みがギュッと凝縮されたソースと、トマトの酸味と食感が心地よい美味しいボンゴレパスタになりました。赤ちゃんニンニクも刻んで、柔らかいないい香り」

 

マメさん「アサリのスパゲッティ」

マメさんは絵を描いてくれました。

画:マメイケダさん

 

春「海辺のピクニック」を終えて

「朝は山間の畑で野菜を収穫し、いちど帰ってきてお弁当を作り、こんどは海へ。潮干狩りを楽しんだあとは、夕日を眺めながらのピクニック。暗くなりかけた空の下、マメちゃんを送りがてら彼女が住んでいる板宿へ。そして、「FARMSTAND」のある北野、六甲へと、あゆみさんの大きな車でぐるりとまわったロードムービーのような旅。神戸というところはなんてあちこちいろいろで、違うんだろうと驚きました。
帰ってすぐにアサリの砂だしをして、翌朝見たら、いっせいに首を伸ばしていました。塩水をかえるときには、ぬるぬるぬめぬめ。わあ、生きているんだなあと実感。
たくちゃんの畑で収穫したグリーンピースは、次の日にちりめんじゃこと合わせてフジッリに。むいたサヤもやわらかそうだったので、内側の硬いところをはがしとって、卵とじにしていただきました。朝のヨーグルトは贅沢に、聖子ちゃんの大粒いちご!
みなさん、ごちそうさまでした。」

高山なおみ

「グリンピースとちりめんじゃこのフジッリ」撮影:なおみさん
「内側の硬いところをはがしとったサヤの卵とじ」撮影:なおみさん

 

Special thanks

料理家・文筆家 高山なおみさん
画家 マメイケダさん
山本文子さん

一般社団法人KOBE FARMERS MARKET / Lusie Inc. 小泉亜由美
動画撮影:Lusie Inc. 原さわこ
写真撮影:Lusie Inc. 久保陽香
制作:一般社団法人KOBE FARMERS MARKET / Lusie Inc.

高山なおみさんと神戸の暮らしシリーズ・記事
秋「秋色のアペリティーボ」
冬「散歩がてらのポットラック」

高山なおみさんと神戸の小さな旅シリーズ・動画
「①おいしいを見つける、海と田畑の神戸旅」
「②今あるものでつくる、神戸のごはん」

こちらの動画もオススメ!
みんなで守り育てよう!神戸の海、山、田畑
【FARM VISIT -winter- 】「生きる」をみつける
【FARM VISIT -winter- 】手と手でつなぐ食文化